前頭連合野/46野のORIGINAL NOVEL

※ 無断転載等、持ち帰り等はしないで下さい。
※著作権は前頭連合野/46野の管理人、怪物の顔(鮭)にあります。





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―――― −ザッザッザッ
―――― −ザッザッザッ
―――― −ザッザッザッ


一人の少女が薄暗い富士の樹海を駆ける。黄緑色のリュックを背負って。

「―――――――ハァハァッ―ゼィゼィゼィゼィハァッゼィゼヒィ!」

酷く少女は息を切らしていた・・・。

そして着ているセーラー服はベッタリと血飛沫・・・返り血が飛び散って染みていた。
右手にはこれまた赤いナイフ・・・血の付着した凶器が存在した。

「―――― −お許し下さい神様ぁ・・・お許し下さい、お母さんお父さん!
お許し下さいお姉ちゃん!そしてヤギのメリー・・・
私は・・・美穂は仇を討つ為に尊いモノ、命を殺めました!!
お母さんお父さんお姉ちゃんメリー、美穂は天国へは逝けません!地獄逝きです!!」

少女はそう叫ぶと、ドサッ―!と突然その場に崩れるようにしゃがむ・・・。

キュイュィ―
バタバタバタ――― − ――奥深い樹海に謎の鳴き声が響き、空に黒い鳥の影が通過した。
少女は「もしかしたら・・・あちらでも会えません。まだ遣るべき事がありました! では、美穂は一生の咎の十字架から逃げてみます!
ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ――――」と言いながら
――ズザッ!バサ!!と地面を手で我武者羅に掘り、ある程度深い穴が出来ると、 そこに血まみれの凶器をそっと投げ捨てる・・・ポトンと簡単な音がした。手早く土を被せる・・・・。

「――――――我が輩の辞書に不可能という文字はない。私にも・・・無い!!!!!」

そて・・・ナポレオンの有名な“格言”を口にした。

――――――――――――――――― ―逃げ切ってみせる!何処までも!!
キュイュィ―キュイ―−

謎めいた泣き声が再び森に響いた――― −不気味に。






***







――――――――リリリリリリリリリリリリリリリリン!!!!

――朝、六時三十分・・・緑の三角テントの中で目覚まし時計がけたたましく鳴り響く。

「―――――――――ああああああああっ!煩い!!」

すると一人の女が青い寝袋から飛び起きて――――――ダン!バン!!と物凄い勢いとパワーで鳴り響く目覚ましを止めた・・・
その際、リン♪という小さな音が最後に鳴って終わった。

「――――はぁ〜」

女は溜息一つ吐きながら目覚ましの隣に置いてあった黒縁眼鏡をカチャリと掛けた。
――――すると何時もの見慣れた自分に今日も成る。
黒縁眼鏡にストレートロングヘアー・・・そして副班長という己の立場。
そう、彼女の名はマキシム。スマイルの気が合わない同僚さ・・・。
マキシムは携帯用の洗面セットで朝の支度を整えると、ジジィ―とテントのファスナーを下ろし外へと踏み出す。
するとそこは――――廃墟の中・・・。

「―――――――あっ!マキシムさんが起きた・・・」
「―――お早う御座います」

既に先に起きていたドラゴンとスマイルがマキシムに気づく。
スマイルは相変わらず笑顔で・・・そして爽やかな挨拶をした後「三十分も目覚まし、鳴っていましたよ・・・気をつけてくださいね。
というか目覚まし使わないで下さい。本来禁止ですよ。あなたの場合使っても無駄みたいですし」と彼女に嫌味っぽく注意した。

マキシムは嫌な顔して「―――低血圧だから如何しても時間きっちり起きるのは苦手なの!」と言い返す。
負けじとスマイルも「――では、予定の時刻よりももっと早めに目覚ましの時刻をセットしたらいかがですか?
先に起きているこっちはリンリンリンリン三十分も目覚まし鳴らされちゃ煩いんですよ!」と返す。
するとマキシムが「――じゃあ、アンタがアタシの目覚まし止めて人を起こせば良いじゃない!そこまで言うなら!!」と更に激しい口調で返す。
「――そんな義理おめぇーにねぇよ!!」とスマイルは笑顔で毒を吐いた・・・。
二人の間に挟まれているドラゴンは「――やめっ!やめっ、止めましょうよ!喧嘩はやめっ!!」と必死に二人を止める・・・。

「―――――――何よ、ドラゴン!」
「―――第三者は口出しすべきではありませんよ、ドラゴンさん!」
「――――――そうよ!猫アレルギーで直ぐ猫見たらクシャミするくせに!」
「―――――なのに猫大好きってどういう感覚なんですか?」
「――――煩い!あんた等馬鹿か!!」
「―――っ!」
「・・・・」
「こんな山奥の廃墟でも大声は出すなよ。朝とは言え、もし誰かに気付かれたら面倒な事に・・・」

ドラゴンは苦い顔して、人差し指を自分の口に押し当てシィーと声を漏らす。
―――――――――彼ら組織は絶対に“痕跡”を拒む・・・。
それ故に組織に“外部”と“内部”の二種類が存在する。互いに互いの証拠を潰しフォローさせる為に。
組織にとって外部とは“外の世界”の事を指しており、
外の世界・・・つまり私たちの居る一般社会・・・もっと平たく簡単に言えば彼ら組織の住む“島から一歩出た社会”のことである。
そして内部とは“内の世界”即ち組織・・・“島”の事をいう。
内部の者は内部(島)の管轄、外部の者は外部を管轄。
外部の主な仕事は内部から依頼や、内部の補佐である。
そして組織には内部捜索班と外部捜索班という“特殊班”が存在し、
内部捜索班は“外部に関わった内部にいる人間の捜索”をし、外部捜索班は“内部に関わった外部にいる人間の捜索”をする。
内部は内部を捜し、外部は外部を捜す・・・。
今回の塚原捜索の件は“内部に関わった外部にいる人間の捜索”なので外部捜索班の仕事なのだが、
あまりにも重要な人物の為“外部と内部の共同捜索”となった。
だが、見つけるのは共同でも、島に連れて帰らないといけないのは内部。
捜査の為とは言えど、決して痕跡なんぞ塵一つ落としてはならんが常識で、
内部捜索班が外部で活動する為にはこういった人が寄り付くことのない廃墟などを利用する。
ちなみに組織は予めこういった廃墟を所有している。
所有されている廃墟は・・・一切手入れされておらず、もちろんな中もそのまんま・・・電気ガスは切られている。
水道は建物の使用期間内のみ使用可能。


「―――悪かったわ・・・デカイ声だして」
「――ボクも軽率でした」
「―――――わかればいいんです。
兎に角、班長は居ないけど一応全員揃ったって事でさっさとミーティグしますよ!」

ドラゴンは自分のテントから高性能ノートパソコンを取り出す。
そしてそれをパッと開いた。スマイルとマキシムが後ろから画面を覗き込む――。
画面には謎の地図が表示されていた。

「―――――――――塚原の居所は掴めたんだが・・・どうも奴は “監禁状態”らしい」

画面を見ながらドラゴンはそう呟く。

「え―――っ監禁・・・!なるほど、見つかっても閉じ込められていて捕まえられない。
これじゃあ、餌(孔蛾)を見張っても意味無いじゃん。食いに来られないんだから・・・・・・。あ〜ガッカリ」とスマイルは残念がる。



「―――――“カイン”の仕業ね、カインが塚原を匿っている・・・」

・・・マキシムが口を挟む。

「―――カイン・・・もっとも厄介な人の名前が出てきましたね、
彼が塚原を匿っているとなれば我々は近づく事さえ不可・・・・・」

スマイルは苦しい笑みを浮かべた・・・。

――――――カイン。約一年前・・組織に“乱”を起こした危険人物・・・。

「――――カインにとって塚原の失踪は都合がよかった・・・だから塚原を手助けして監禁。
上手いこと利用したなカイン・・・」とドラゴンは言う。
するとスマイルは「―――塚原さんが戻ってこないと組織は潰れます・・・・現在、島の所有権を手にしているのは彼。
島売られたらお仕舞いですよ!如何します、連れ戻せなかったら?
もう役員とか辞めて、このまま三人で門司港に行ってバナナの叩き売りでもして生活します?
あっ、班長の鬼頭さん入れて四人か!四人で仲良くバナナ売りデス!これはこれで楽しいかも」と変な事を言う。
それを聞いてドラゴンは「―――――――――いいね、スマイルさんは本当に明るくポジティブで」突っ込む。
スマイルは「はい。前も言いましたが、それが取り柄ですから」と陽気に答えた。

「―――――大丈夫よ。私達に100%チャンスが無いわけじゃない。
乱を起こした時に力を使いすぎて“今カインは極度に弱っている”はず。きっと隙が何処かあるわ・・・・」

マキシムが助言する。

「―――ハッ!なるほど、隙ならある!弱っているなら、きっと閉じ込めている力はギリギリで何時プツンと切れてもおかしくない。
既に捕まえる力も能力もない。―――逃げられたらアウト」

ドラゴンは状況を予想し把握する。

「――でも、ひたすら塚原さんが逃げるのを“待つ”しかないのか。
つまり『果報は寝て待て』ですか?やっぱり餌(孔蛾)さえ見張っていれば来る事は確かですよね。 あー待つの長いなぁ・・・」

スマイルは難しい顔をした。
頭の中で「何か他に良い手段は無いのか」と策を練っているのだ。
――――――運に任せてられない。


―――――――――――――――カタカタカタ・・・とドラゴンはリズミカルにキーを叩く。

「――――――兎に角我々の仕事はこの商店街付近の詮索と、引き続き孔蛾実の監視だ」

―――タタッ!と画面が変わり、“岡松精肉店を中心とする商店街の地図”が表示されていた・・・。






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