前頭連合野/46野のORIGINAL NOVEL

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※著作権は前頭連合野/46野の管理人、怪物の顔(鮭)にあります。



ある夜、青年は夢を見た。
その夢は頭の中に懐かしい光景を映した。それも大変麗しく鮮やかな。

澄んだ水色空の下、青年は少年になっていた。
少年は菜の花咲く畦道を、懐かしい幼馴染と楽しく喋って歩く。
二人は揃いの白いシャツに黒のズボン・・・制服を着ている、互いにお日様の香りがした。
それは干したばっかりの香り。明るい香り。


しばらくしていると、ポツンと少年の袖に冷たい粒が一滴零れた。
少年は、何だろう?と濡れた袖を確認する。
すると少年はハッとした、白いシャツに黒い水玉ができていることに。
少年はふと空を見上げる。
水色空が―――― −たちまち、灰色の雨雲に変わっていく。
そして、パラパラ――――― ―ザァ――――――――――― と沢山、黒い雨が降ってきた。


墨の様に黒い雨に少年は怯え、隣の幼馴染の顔を見る。
――――― ―しかし、さっきまで一緒に笑っていた幼馴染は、気持ちの悪い不気味な顔をしていた。
少年は目を見開いて驚く。衝動で二、三歩後ずさりする。ピシャビシャと泥水が跳ねる音がした。
幼馴染はニィ――と薄ら笑みを浮かべ、重い時の中をスローモーションみたいに、
ゆっくりじっくりと後ろへそのまま倒れていった。

少年は慌てて戻り、幼馴染を起こそうと彼の肩を掴む。
不気味な薄ら笑みを浮かべたまま倒れた幼馴染の口から、白い鳥達が湧いて出てきて空へ飛んでいく。
少年はその鳥達を目で追う。
白い鳥達は黒い雨に打たれ、ドス黒い鳥になってしまった。
少年は黒くなってしまった鳥を透明な真水で洗ってやろうと必死に鳥を捕まえようとする。
そして、あとちょっとで一羽だけでも捕まえられるというところで・・・・ビシャッ!!
と泥水を掛けられた感覚とギリギリと締め付けるような圧迫感を右足に感じる。
少年は思わず振り返る、すると・・・倒れていた幼馴染が足首をことさら強く掴んでいた。
そして、「――― ―この嘘つき医者!!!」と声を荒げて少年を罵った。
少年は悲鳴を上げた「――――――――アアアアアアアアアッ――― −!!!!!」と。




―――――――――――彼は掴み損ねた、鳥を。







***







「!!―――――――― ― ―!!」

真夜中、ガバッ!!と孔蛾がベッドから起き上がる。
目を開き、べっとりと掻いた冷や汗を拭う。

「――――― ―夢・・・」
彼は夢を見た。それはなつかしくも、美しくも、恐ろしい夢だった。

「・・・・・」

枕元のランプを点け、カレンダーを見る。
孔蛾はしばらく黙って「――――― ―塚原・・・・」と呟き、頭を抱え蹲った。

罪悪と取り返しのつかない過去の過ちが、黒い影の怪物となってこの青年を包み隠す。

そして、影は彼を連れ去った。

"もうこれ以上、ここには居られない"






***







日曜日の朝、
春日子が「――――― ―わーっわぁーっわぁ―――――――っ!!」と叫びながら家の中を走り回る。

「――!?どうしたの?春日子ちゃん!?まだ五時前よ!!眠いわ〜」

カヨ子が何事かと寝室から出来た。
ピンクのネグリジェ着て、頭にカール巻いて、眠そうにあくびをしている。

「かっ、かっ、カヨ子さん!!」

カヨ子に気づいて、騒がしい春日子の動きは大分おさまったが、まだ足はタンタンと床を足踏みしている。落ち着きがない。

「なんだい朝から?いったい何があったんだい!?ゴキブリでも出たのかい?
だったら殺虫剤・・・は、もう空だから馬鹿従業員を起こして、スリッパを持たせて・・・叩かせればぁ――」
「――――― ―その馬鹿従業員がいないんです!!どこにもいないんです!!」
「―――――――えっ!?」
カヨ子は、春日子の衝撃的な一言で完全に眠気が吹っ飛んだ。

「―――― ―ちょ、ちょっと何よ、何よそれ!?どういうこと!?」
「――― ―カヨ子さんこれ読んで!!」

春日子は戸惑うカヨ子をキッチンのテーブル前へ引っ張る。
そして「――― ―これ!これ!!」と、テーブルの上に置かれた一枚の便箋を必死に指差す。


「――― ―!?何これ!?」

カヨ子はその便箋をピラッと取って見る。
―――― ―便箋には汚い字で何か綴られている。
それをつらつら読むと、カヨ子は「!!あら!あら・・・あら、あららら・・・」と思わず言ってしまった。


便箋に綴られた内容―――― ―それは、ボールペンで書かれた、

『大変お世話になりました。
いままで、迷惑かけてごめんなさい。
色々有難う御座いました、さようなら。 孔蛾』

の三行。

「これって、あんた・・・ちょっと・・・出て行くって言う、置手紙じゃ・・・・」

そう、それは・・・"さよならの手紙"だった。

「ボク、トイレへ行きたくなって目が覚めて、それで下へ降りたらテーブルにこれがっ!!
驚いて家中孔蛾さんを捜し回ったんです!でも・・・・どこにもいなくって!!」

春日子はそう話すと、苛立って床踏みがより一層激しくなる。

「一体何があったんだい?昨日だってあんなにふてぶてしい態度してたじゃない!
何時も文句とワガママ言っていたじゃない!人をババァ呼ばわりして・・・・。
なのに、なのに何さ!こんな味も素っ気もない様な置手紙なんてしちゃってさ!
お世話になりましたなんて書いて!何よ!何も言わずにここを出ていくなんて!!
泣いた顔して勝手に来たくせに・・・勝手に出て行った!」


カヨ子は半分怒って半分悲しい顔をした。
自然に・・・目から涙があふれ出る。



「孔蛾さん・・・失踪しちゃった。孔蛾さんが失踪しちゃった!!
また何処かで首吊っていたらどうしよう!!もう手遅れだったらどうしよう!!うわぁぁぁぁっん!!!」

妄想が膨らみすぎて、春日子が声を上げて泣き出す。
カヨ子は「大丈夫よ、春日子ちゃん!!きっと大丈夫!!警察来てないから!」と言い聞かし、春日子を安心させようとするも、 全然聞かず、春日子は「うわぁぁぁぁっん!!死んじゃいやだぁ!!ボクがせっかく救った命なのに!!如何してですかぁ―――っ!!何でどっか行っちゃうんですか!?絶対問い詰めてやる!!一喝してやる!ボク、ボク孔蛾さんを地球中捜しにいきます!!」と叫んで外へ勢い良く飛び出した。 「――― ―!ちょ!ちょっと春日子ちゃん!!春日子ちゃん!」とカヨ子は呼び止めるも、春日子はもう行っちゃった。





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