前頭連合野/46野のORIGINAL NOVEL

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※著作権は前頭連合野/46野の管理人、怪物の顔(鮭)にあります。





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――――暗く、狭い窓一つしかない、とても広い部屋に少年がいた。九、十歳ぐらいの。

それも大変美しい少年だった。色は白く、顔は彫りが深く、ギリシャ彫刻のように整っている。
――――髪はネオンブルーに青く光っている・・・これは人間の髪の色ではない。
普段は白髪なのだが、暗闇になるとこのようにネオンブルーに発光するそうだ。
まるで・・水母(クラゲ)の様。けしてヘアーテクニックなどではない。生まれつきである。
――――“彼は人間ではない。”
―――目は黒いが・・・左目は眼帯をしていた。
―――――そして喪服を着ている。喪服・・・という事はこの少年はナノキの一員。
つまり・・・組織の一人という事になる。――この少年の名はキイト。特別役員育成のメンバー。

キイトは冷たい空気を身に纏い、大きな黒い長机に着き。背筋を伸ばし、
ただじっと目の前の巨大水槽を静かに見つめていた。
――――大きな水槽の中には大きなアロワナが一匹だけ泳いでいる。

「・・・・飼い殺し」

――――所詮、俺もお前もけして此処からは出られない。

キイトはアロアナに向かってそう呟く。
すると――コンコン!と誰かがドアをノックした。
キイトは「――開いていますよ」と言う。

「―――そうですか、では失礼」

―――――――ラグナレックが入ってくる。鼠が入った檻を手にぶら下げて。

「――――――これは?」

手にぶら下げられた檻の鼠を見るなりキイトは、眉間に皺を寄せ嫌悪した。

「――――あれ?嫌いでしたか、キイト君は鼠?」

ラグナレックがそう言うとキイトは「――いや、嫌いじゃない」と答える。
――――――――――檻の中の白い鼠。「これはお前だ!」と言われている気分だった。

「―――――それはよかった!実はこの鼠さん、うちの組織の者がペット禁止なのに勝手に飼育していたんですよ〜
それも資料保管庫で!殺しちゃうのは可哀想なので、“動物だけが好き”なキイト君に差し上げます、はいドウゾ」

ラグナレックはニッコリ笑って、鼠が入った檻を長机にポンと雑に置く。
そのせいで檻が揺れ、――チュチュ!と鼠が驚いて鳴いた。
―――――――――――ラグナレックは“人間も嫌いだが動物も嫌い”である。
甥のスマイルとは違い極度の動物嫌い。動物の扱いには慣れていない。

「―――――――――――名前は?」「この鼠の名前は?」とキイトが訊ねる。
ラグナレックは「―――ハーメルン。ハーメルンですよ」と答えた。
・・・・・ハーメルン。確かスマイルも鼠にハーメルンと名付けていた。
だとしたら間違いない、この鼠はスマイルがラグナレックに没収された鼠である。
―――――いや、元々は塚原のペットの鼠・・・だったのだが。

「――――――−それより、まだ良くならないんですか?アナタの“千、里、眼”」

ラグナレックは人差し指で自分の左目をツンツンと突くまねをする。

「――――――――――使えませんよ。僕の千里眼は使えません。
眼帯見て分かるでしょ?まだ“炎症”しているんです。痛みも腫れ引きません」

――――――――――――――――この男、僕の眼を確認しに態々来たのか。
―――――――――相変わらずしつこい性格だ。

「――――そうですか、それは残念」
「―――前もお伝えしましたよね?千里眼は使えないって。忘れてしまったんですか?」
「――――――――い〜や、ちゃんと覚えていますよ。
ただ・・・半年も前の事なのでもうそろそろ治っているのではないかと、思ったんですよ」
「――――僕はカインの乱の時、かなりのダメージを眼に負ったんです。
それでも貴方たちの為に組織の為にと惜しむ事無く力を使ってきました。けれど僕にも限界というものがある」
「――――――そうですか。でも本当は見えているんじゃないんですかぁ〜?」

・・・・ラグナレックが卑しく笑ってそう言うと、キイトは「――千里眼といのは一度ダメージを受けたら治るのが大変遅いんです!
そんなに疑うのなら、眼帯を捲りましょうか!!?」と激怒した。
そして、立て続けにこう責める「――アナタが僕の眼を使って何がしたいかなんて見当がつきます、どうせ“ロミオの指輪”の事でしょ?
残念ながら僕の千里眼を使っても其れだけは見えませんよ!眼が悪くなる前に一度実験してみたでしょ?
あれはロミオ本人にしか捜せませんからね!まぁ、そのロミオ当人はまだ僕よりずっと子供で捜す能力なんて持っていないし、
何処に指輪があるかなんて当然分からない。しかも指輪の存在自体知りもしない!!
―――それにアナタは何時も、島の住人の為役員の為組織の為と言っているが、
結局は全部自分の為じゃないか!!自分の地位や名誉の為に僕等を何時も利用している!
――――――――――――――――アナタは単なる“高慢者”。
―――幼稚で、統括する能力もカリスマも無いくせに命令は一人前。
――――見栄と虚栄を身に纏って中身は空っぽより酷い、欲望を詰らせている。
――かつての英雄の猿真似をしていた前の代表責任者の方がまだましだ!」と。

「――――――っ!おどりゃーええ気になるなアッ!!調子乗ったら死なすッ!!!!!!!」

―――――――――ド―――――ン!!ガッシャーン!!!―――――ザンバァーン!!

行き成りラグナレックがブチ切れる!広島弁で『お前いい気になるな、調子乗ったら殺す』とキイトに脅し怒鳴ると、
傍にあった巨大水槽を右手でおもいっきし殴り壊したのだ。物凄いガラスの破壊音と大量の水が津波のように流れ出る。
―――そして、ガラスの破片が散りばめられた床の上をアロワナがビチビチ!と苦しそうに跳ねていた。

「・・・・・・」

そんな光景をキイトは冷静な表情で受け入れている。
―――流れ零れた水槽の水が・・・履いている靴をびしょびしょに濡らしていた。

「――――組織に養われておる分際で、かばちたれんなや!!
あん?おどれにゃぁ、ごーたいくそが煮えるわぁ!」
※かばちたれ=文句 ※ごーたいくそが煮える=ものすごく腹が立つ

――――――――――――――――しまった、俺の気性の激しさは兄貴以上だったんだ。

「・・・・失礼。兎に角、眼が治ったら何時でも本部の方へ連絡を」

ラグナレックは毒ついた後・・・冷静さを取り戻す。

「――――――――――“これからアンタが腐らせていくんだな、この傾いた組織を”」

キイトは刺すような視線をラグナレックに向ける。

「壊した水槽は―― −清掃員に片付けさせますね」

ラグナレックはニンマリ笑って、何事も無かったかのように大部屋を出て行った。

――――もしや、あの男は組織だけではなくこの島・・・エデンの園自体腐られるかもしれない。
――――――――――――――――――――――――楽園崩壊。

「――――何が代表責任者だ!このウェンペクル(悪人)」

キイトは閉まったドアに向かってそう呟く。悔しそうに。

―――――――ビチィッ!!ビチ・・・ィ・・。
―――先ほどのアロワナが大きく一回跳ねて息絶えた。






***







「―――――なんでだろう・・・」

春日子はカレンダーを手に取り青い顔をしていた。

―――――――――こない!

「―――おかしいナァ・・・こんなに遅れた事ボクないのに」

――――――――――――――こない・・こない、全然こない!!

「―――――どうして、どうしてこないの!?生理がこないの!」

生理がこない。
そう・・・・・・春日子は三ヶ月生理が来ていない。
――――それに、ここ最近・・・気分が悪い。

「―――うっ、うぇっうええぇっ!」

春日子は急に吐き気を催し、急いでトイレに駆け込み吐く。

「――――――うぇ、うふぇっ・・げぇええっ!!ハァ・・ハァハァ・・・」

――――――――変だよ!ボクの体変だよ!!

「―――うっ、うぇっ・・・ゥツはぁ・・・」

サァァァッ―と吐いた物を流すと手を洗い、自分の部屋に戻ろうと階段へ向かう。

「―――――――――具合悪いのか?なんか、トイレからゲェゲェ聞えたぞ」

すると丁度、孔蛾と出くわした。

「――――あっ、孔蛾さん・・うぇっ!」

春日子は吐いたばかりにも関わらず・・・まだ吐き気が残っていた。

「――――――オイ!俺は吐き気を催す顔かっ!?」

失礼だろう!と孔蛾が怒る。
春日子は「―――違っ!ゴメンナサイ・・・ボク気分が悪いんです」と言い訳した。
すると孔蛾は「――――――えっ、大丈夫か?どんな感じだ?あっ!わかった食あたりだ!お前賞味期限切れの牛乳たまに飲むから、
いつかこういう目に遭うだろうとは予想はしていたんだがぁ・・・」と勝手に彼女の吐き気の原因を味期限切れの牛乳による食あたりと断定。 勝手にそうと決め付けられた春日子は「―――違います!絶対!!」と断固否定した。


「――――え〜じゃあ、何だよ原因?」
「―――それはボクが知りたいですよ!」
「で、何時から気分が悪いんだ?」
「――えっ?何時からって・・・ここ最近です」
「具体的にどう気分が悪いんだ?」
「え〜っ!なんでボク、孔蛾さんにそんな事まで答えないといけないんですか!」
「――馬鹿!これでも俺は医者を志した者だぞォ!俺なら何が原因か分かるかもしれん!
今からする俺の質問に全部答えろ!いいか、正直に全部だぞ!全部!」
「・・・・・え〜っ」
「いいから答えろ!」

渋る春日子を孔蛾は、無理やり答えるように促した。尋問。

「―――どんな風に気分が悪いんだ?」
「―――――え〜と、吐き気が治まらないんです。
吐いても吐いても・・・また吐きたくなるんです!胃もムカムカするんです!」
「―――ふん、嘔吐と胃のムカつき。それはどんな時になるの?慢性的?」
「――えっ、えっと・・・兎に角、食べ物のにおいを嗅ぐと吐き気がします」
「―――――ふん、じゃあ他は?吐き気・嘔吐以外で何か他具合悪い所ある?」
「――――えっ!え〜と、あとは熱っぽいとか・・・トイレが近くなったとか」
「――――――ふん、他は?他に変わった事とかはある?」
「―――えっ!?他?ほっ・・・他は、他は別になにもォ」
「―――――――――隠すな」
「――――何も無いです!」
「―――嘘つけ!目が泳いでるじゃねぇーか」
「――うっ!」
「――――全部話しなさい」
「――・・・・・せっ」
「――せっ?せっ何?」
「・・・せっ、せいり。生理が三ヶ月もきていません」

今にも泣きそうな顔で春日子がそう答える。
すると孔蛾は黙って、春日子をそっと抱きよせる―― ‐。
行き成りで「――っ!?」と彼女は驚く。

「―――――――――――−春日子、“原因は俺だ”」

孔蛾は冷静な顔してそう告げた―― −。

「――――えっ?」

―――――――――――――――――何言っているの?この人。

「―――えっ?て、俺しかいないじゃん。やった相手」

「――――へぇ?!」

春日子は眼を丸くする。

「―――――――――お前、“妊娠”しているんだ。多分。結婚しよう!」

孔蛾は春日子を抱きしめたまま破顔した。
しかし、その表情の裏ではこれでもかと、ほくそ笑んだ。

多分ではなく・・・春日子は確実に孔蛾の子を身篭っていた。
彼女は彼のめぐらせた策略にまんまと引っかかっていたのだ。
そして、まんまんと抜け出せなくなっていた。
――――画家クリムトよる『接吻』という作品がある。
この作品には口付け合う男女が描かれている。二人(男女)は幸福の黄金と溶け合い、官能で美しい。
しかし・・・その男女の後ろは、危うくも崖っぷちなのである。
―――――――――――――――――絶頂の幸せと究極の危険は隣り合わせ。

私は策略で生まれたものが、
彼等に『幸運』『不運』のどちらをもたらすかは知らない。

策略=物事をうまく運び、相手を巧みに操るためのはかりごと。大辞林より。



――――――――――――くれぐれもお気をつけて、皆さんも。



“策略家”には。

Story7終了、Story8 悪魔の角が折れた日に続く。




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