前頭連合野/46野のORIGINAL NOVEL

※ 無断転載等、持ち帰り等はしないで下さい。
※著作権は前頭連合野/46野の管理人、怪物の顔(鮭)にあります。





top


「――――イヨォ!春日子〜」

パチンコ帰りの途中、孔蛾は帰宅中の春日子に出くわし声をかけた。

「――うぇ!孔蛾さん・・・」

すると彼女は嫌そうな顔をして振り向いた。

「・・・なんですか、孔蛾さん。またパチンコの帰りですか?
そんなに仕事さぼってばっかりだと何時か本当にクビになりますよ!」
「いいじゃん、クビになってもパチプロ目指しゃー」
「――なっ、最低です!」
※パチプロ=パチンコを職業にしている人。当然、孔蛾にそんな才能はない。
それにパチプロは所得税を払っていないので社会的には無職でしかない。


「―――そういえば、昼言い忘れたけど・・・その制服似合うじゃん」
「――えっ?」

突然そんな事を言い出す孔蛾に春日子は少し驚く。
でも春日子は「――はい!ボクは、本当は女の子なんですから」と爽やかに言ってニコッと笑った。
―――ボクは、本当は女の子なんですから。春日子は理解していた。
あの手紙の追伸の意味を・・・・今井絵理加の言葉の意味を。
孔蛾は「――お〜やっと認めたか自分が女と」と感心する。

「――ボク、変身していたんですね・・・もう生まれながら」
「―――そっか、お前あの追伸の意味分かったのか」
「――はい、“わかろうと思えば何時かきっとわかる”って孔蛾さんが教えてくれたから、ボクわかろうとして考えてみました。
そしたら言ったとおり・・・わかっちゃいましたよ」
「そうか」
「――――――――見抜いていたんですね、絵理加先生は。ボクの幼稚な事・・・」
「――だろうな」
「孔蛾さんも。孔蛾さんもボクを見抜いていた・・・」
「・・・・」
「―――結局、結局ボクは・・・世間知らずで言われた事を直ぐ信じてしまう。
自分勝手な悪い子のままだったんですね」
「―――――――オイ、お前は悪い子なんかじゃねぇーよ、良い子だよ」
「あっ、孔蛾さん・・・」
「あと、乳が豊かな子でもある」
「――――ハァ?!」

一気に気を悪くしてしまった春日子に孔蛾は体を寄せて「――――何お前怒ってんだよォ〜」と半笑いで言う。
春日子は「――別に怒っていません!てか、近いです!」と言って孔蛾を押し離そうとする。
しかし孔蛾はより一層くっついてくる。
春日子は「鬱陶しいデスよっ!」と嫌悪、
なのに孔蛾は更にくっつき「―――生理か?生理で苛々して怒ってるのか?」と耳元で聞いてくる。
春日子は「―――ハァ?終わったばかりで、違いますから!」と言って孔蛾をドンと突き飛ばす。
孔蛾は「―あっ!バカ!あぶねぇー」と言いながら一瞬よろめいた。

―――――――終わったばかりで、違いますから!という事は生理後間もないという事か・・・。
――――――――――――――――――下手したらもっとも・・・。

刹那・・・孔蛾は白い歯も見せずにニヤリとドス黒く残忍に笑った。
そんな彼の顔を見たら誰もが恐怖で震えるだろう。

―――――――――――――今井絵理加は時間がないと言った。
来年には春日子の兄貴・・・冬日子が妹を連れてゆく・・・。
――――――――――――――――――奪われる前に、取られる前に・・・“俺の物”に。
――――――この子は(春日子)は鈍い、限りなく鈍い。
あの時「・・・これからでいいから。お前にとって俺が何かなんて、
これから考えてくれればいいから」とかその場限りの甘やかしを言ったが、
考えさせる暇もねぇー。 あいつは答えを出すのが遅いからだ。真剣に深く考えすぎて必ず空回りしてしまう・・・。
待ってられるか!―――しかたないここは一つ、うん億年続く“動物の本能”の力を借りるか!!

・・・・・・彼は“前から策していた事”をやってしまおうと決意した。
だがしかし、この時孔蛾は肝心な事に気づいていなかった・・・
―――お前もバレるさ。人は何時も何かに翻弄されている。独占欲・・・・。
それは魔王のかつて言った言葉のそのもの。孔蛾本人は気付いてない。
泥沼のドツボにはまっていた事に。もう・・・逃げられない独りから逃げられない二人になる。

「―――――なぁ、春日子、俺思うんだよ・・・」
「―――はぁ?何をですか?」
「――――俺はお前が好きって言ったよな、お前も俺が好きなんだよ!」
「―――?!!はぁああああっ?」
「――――――お前は俺が好き!」
「―――ハァ!?何馬鹿な事言っているんですか!
豆腐の角にでも頭ぶつけておかしくなったんですか!?」

今度は何を言ってんだと春日子は呆れた。
――――――――――なんでボクが孔蛾さんを好きなんですか!何でそうなるんですか!?
――――好きとか以前に・・・ボクにとって孔蛾さんが何なのかさえもまだ分からないのに。
――――――というか、これから考えてくれればいいって言ってくれたのに・・・孔蛾さん。

「―――いいか、春日子・・・良く聞け。お前が俺を好きだという根拠がある!」
「―――――はぁ?」
「――お前は“俺を絶対に拒まない”、拒絶しないんだ!!」
「――――――――――はぁああああああっ!?はぁ?きょぜっううっ?何ですかそれ?」
「―――――いいか、春日子・・・俺はちょいちょいお前を抱きしめた事がある。
人は親しくもない、また好意を持たない人間に触られると拒絶を起こす!
なのに、お前はそれ(抱擁)を拒まず受け入れた!!
それはつまり、お前は俺に好意があるということだ!よってお前は俺が好き!」


――――――――――うぅぁぁあっ!!!!!駄目だ、なにそれ?もうこの人滅茶苦茶だ!


「――――何言ってるんですか!ボクは孔蛾さんに、酔っ払って肩を掴まれた時も、
押し倒されてキスされた時も超超超超超ちょォぉぉっ!!孔蛾さんを拒みましたよ!断固拒絶ですよ!!」
「―――馬鹿!アレは“未知から生まれた恐怖への防衛だ”!
アレはお前にとって未知だったんだよ・・・未知との遭遇をしたお前は驚き恐怖し防衛してしまったのだよ。だから拒絶ではない!」
※拒絶です。限りなく拒絶です。

「・・・・ずいぶん自分勝手な解釈ですね」
「・・・正論だ!」
「どこが!」
「全部!」
「――絶対違う!」
「・・・・・・・・ああああああっ!!もういいっ!証明してやる!!!」

突然孔蛾は―グィ!と春日子の二の腕を掴み自分の方へ抱き寄せる。
そして乱暴にそのまま抱きしめ、一瞬で口を塞いだ。
「――――?!!!!!」と彼女は驚き、目を大きく開く。
―――――――――――――――何これ!!!!!!!!!!?
春日子はその口付けに“痺れ”を覚えた・・・それと同時に頭がぼぉ〜とし、クラクラする。
―――――息が出来ない。そう・・・・これは只の口付けではない“深い口付け”。
つまり―――――――――――――――二人はディープキスをしていた。

――――ほんの数分経つとゆっくりと孔蛾の唇が春日子から離れる・・・。
春日子は頬を桜色に染め眩暈を覚えた、体に力が入らずカクンと膝が曲がる・・・・。
孔蛾は春日子が崩れ落ちないように腕に力を入れて彼女を支えた。


「―――――−・・・うぅっ」

―――恍惚とした表情の少女。

「―――ほ〜ら・・・お前は俺を拒まなかった」

孔蛾は春日子の右耳に唇を付け、甘ったるい声でそう小さく囁く。

「――――あっ・・」
「――ほら、良い子だから正直に言ってごらん・・・好きですって」

―――――――――――耳が溶ける。
春日子は堪らず「―――す・き・・・好きです」と言ってしまった。
孔蛾は“してやったり”と微笑んでそのまま彼女の顔に頬を寄せる。
――――――洗脳。
彼は“色”を使って彼女を落とした・・・。
もし彼がホストだとしたら1に容易くなれるかもしれない、まぁ彼にその気があればの話だが。

「――――よし!俺がとってもいい所に連れて行ってやろう」
「―――ふぇっ!?」
「――ついて来い!!」

孔蛾はバシィ!と春日子の手首を掴むとそのまま彼女を連れて何処かへ走り出す。

「―――えっ!!えっ!?えぇぇえええっ!!」

春日子は戸惑いながらも抵抗しない・・・できない、驚きすぎて。
――――――――暫くすると二人はある場所へとたどり着いた。
・・・・孔蛾が「―――よし!俺がとってもいい所に連れて行ってやろう」と言った場所、
そこは―――――赤青ピンク紫と夜を照らすネオン国・・町で有名な“ラブホテル街”だった。

「――――?!ハッ!ええっ?!ちょ、ちょっとおォ!!!こっ、ここってぇっ!」

――その事に気付いた頃には既に時遅し、サァ―‐と青ざめる春日子。

「――――――ほら、行くぞォ〜」



―――俺には今井絵理加にもユポにも“出来ない事が出来る”。
――――――――――――俺は今日、越えられない壁を越えてやる!


――――――――――――――――――――――春日子と俺のガキ作ってやるっ!

「――いゃあっ!嫌っ!いゃぁあああああああああっ!!!!!」と春日子は泣き叫ぶ・・・が、
暗いレーズン色の空の下、ネオンの奥へと彼に連れ去られていってしまった――――――― −。








***







―――――――あれから数時間後・・・辺りはすでに真っ暗になっている。
そんな夜の路地を宇佐美がトボトボと歩いていた。

「――――あ〜っ、疲れタァ・・・しんどい」

塾帰りの宇佐美は勉強疲れで疲労している・・・。
授業が終わったその直に塾、その塾が終わったらその次の塾。
一日中シャーペンを握っている感覚がする。

「―――――――はぁ〜」

宇佐美は深い溜息を一つ吐くと、一休みとピタリと今歩いているそこで足を止めた。
・・・・・そして、ふと何気に横を振り向いてみた。――ラブホテル街のネオンがチカチカする。

「・・・・フン!」

―――――――――――何で塾の帰り道にラブホ街がアンダョォ!!

「・・・ラブホなんて、人間の肉欲の象徴じゃないか!なんて汚らわしい嘆かわしい。
あんなのただのピンキー産業なのにホテルとか名乗るんじゃない!!」
※そのセリフはラブホテルに失礼です。
※ピンキー産業=ピンク産業の事。ちなみにピンク産業とは性に関わる産業の事。

自分は毎日勉強漬けの苦界だというのに、その目の前は全くの別世界が広がっている・・・。
恨めしや―――― ―。
ラブホテルに向かって「ちっきしょー」と毒づくも、その次の瞬間「――っ?!」と彼はとんでもないものを目撃する。
―――――――――――えっ?あっ、あの人は!?ハァ?えっ!!
―――そっそして・・・その隣の女子高生は、はっ、はっ、うぇ?!

――えっ、ぇっ・・・・えええええええええええええええええっ―――――――っ!!!!!!!!

・・・・・唖然とする宇佐美。実に良いリアクションだ、出川哲朗ぐらい・・・。
※出川哲朗=日本のリアクション芸人。



―――――――――それもそのはずだ、ラブホテル街の中から孔蛾と春日子が出てきたのだから。
・・・・孔蛾は満ち足りた表情を浮かべ、春日子の微妙に乱れた制服の襟をせっせと直していた。
彼女の白い首に所々赤く咲いているキスマーク(吸引性皮下出血)・・・つまり“性的関係”をもった証が見え隠れする。
孔蛾が「――やっぱ隠れねぇーナァ」とか「マズイなぁ・・・付けすぎた」「お前が最初あんなに痛がるから・・」とか色々気になる事を言っている。 一方、春日子は体から甘ったるい余韻が抜けてくれず、うっとりとただ呆然としていた。
―――――――――――――もう骨抜き状態。されるがまま。
そして二人ともこちら・・・宇佐美には気付いていない。出歯亀宇佐美に・・・。
宇佐美は春日子の首を見て「―――きっ、キス・・・・あっ、痣・・キスキス!」と混乱する。

―――有り得ない!!マジでぇ?!あんな純情で真面目で可愛い子がっぁああああっ!!!
――――――――――つーか、それは彼女の傍に居る孔蛾さんがつけたということになる・・・。
―――――え゛っ?て、ことは??二人は付き合っているって事になる。うん、そうだ。
――――――――――――――――――――――二人は付き合っている。
―――付き合っている。あっ、なっ!ちょ、ちょちょっとそれ待って!ぇっ?あの?それ
だっ、だとしたら何時からそういう関係だったんだぁぁあぁあああ!!!!!?
―――――なっなっなっ何で孔蛾さんと春日子ちゃんがぁ!!!!!!!!!
―――・・・・・・・・・てか、キス跡以前に、ラブホ街から出てきたって事は、
二人はセック・・やめとこ!もうこれ以上言うのをやめとこ!!これ以上言ったらきっと大変!!!

整理しきれないスクープ情報で、宇佐美の思考回路がパンク寸前・・・。
孔蛾は「―――しゃーない、こうやって隠すかー」と言ってシュル―と春日子の締めているセーラー服の赤いスカーフを解く。
そしてそれをシュルルと彼女の首に螺旋に巻いて最後リボン結びにする。上手い具合・・・キスの痣が隠れる。
「・・・これも目立つけど我慢しろよ」「だけど跡は見えないからな」と言って春日子の頭をポンポンと大きな手で柔らかく叩く。
春日子は孔蛾に心奪われポォ〜としたまんま・・・。

「――――さぁ〜帰ろ」

孔蛾はよいしょと、春日子を軽々と負んぶし人気の少ない通りへと消えていった。



「――――――――――眼科行こう。耳鼻科も行こう。俺、明日眼科と耳鼻科行こう」

――――――――――――――――――――――現実逃避。
宇佐美は今までの見た聞いた光景を、取り敢えず一時忘れて今のは・・・幻だったという事にした。
虚しくもそれはより一層現実を引き立たせているだけにも関わらず・・・・。
取り敢えず次の日は頭痛がする。








next back



top
inserted by FC2 system