前頭連合野/46野のORIGINAL NOVEL
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※著作権は前頭連合野/46野の管理人、怪物の顔(鮭)にあります。
―――― −コンコンコン!
「―――― −ごめんくださーいっ!宇佐美です!!」
―――― −コンコンコン!
「―――― −ごめんくださーいっ!宇佐美です!!――−ごめんくださーいっ!つーかいい加減出ろやっ!」
次の日、不快な顔をして鏡を脇に抱えた宇佐美が岡松精肉店裏口前に立っていた。
抱えている鏡は高級毛布で大事に包まれている。何度もコンコンと戸を叩く。
―――― −ガチャ
「なんだよ、うるせぇーな!!日曜の朝から・・・・」
しばらくして、パジャマ姿のだらしない孔蛾がトースト齧りながら出てくる。
「昨日、自分がここに来いって言ったんでしょーがっ!!
だからわざわざ来てやったのにっ!てか、もう昼の一時ですよ!!朝じゃない・・・・」
カッカしながら宇佐美がそう言うと、孔蛾は自分の腕時計を見て「――― −あっ、ホント。昼じゃん」と声を漏らした。
「まあ、ちょっとそこで待ってろ。今着替えて来るから」
孔蛾は一旦中へ戻りトースト全部食べ終えると、薄紫のシャツと黄色のデニムのパンツに着替える。
そして夏流雫を呼び、宇佐美が待っている裏口へ連れて行く。
それに気付いた春日子が「僕も行きます!!」と一緒に出ようとするが「―― ―お前は駄目!」と孔蛾に止められた。
「何でですかぁー!!何で僕だけ駄目なんですか!仲間はずれはいけませんって絵理加先生が言っていました!!」と反論すると、
「邪魔だから」と言い返される。
それでも春日子はめげずに「僕そんな事ありません!邪魔しません!!役に立つ子です!!」と言い張る。
しかし「駄目!!」と強く言われる・・・・・孔蛾は如何しても、もうこれ以上春日子を連れて行きたくないのだ。
遊園地の事やマネキン人形の事などで彼女は散々怖い思いをしている。今度なんかあったら・・・・・想像するだけで恐ろしい。
しかし―― ―春日子は"諦めの悪い子"だった。
「―― ―僕を一緒に連れて行ってくれないのなら・・・・こうしてやるっ!!」
「―――!!?」
―――― ガチャガチャカチヤ−ッ!!ガッチャン!!
突如春日子は鞄から良く出来たオモチャの手錠を取り出し、それをガチャン!!と孔蛾と自分の腕にはめ、カチャリと確り鍵をかけた。
・・・・・・見事に手錠は二人の腕と腕を繋げている。
「―――― ―――オッ、オイ!!お前っ!お前何してくれるんだよ!!」
―――― ガチャガチャガチャガチャ!!
孔蛾は必死に手錠を取ろうとするも無駄、鍵は力じゃ外れない。
「突然何事ですかぁ〜もぉ〜」
行く前なのに行き成り揉め事が起こりだして宇佐美は呆れる。夏流雫も何事かと心配する。
「コラッ!!春日子!外せっ!!直ぐコレ外せ!!」
ガシャガシャと音を立てて、はめられた右腕を上下に振る。繋がっているので春日子の左腕も上下に揺れる。
「駄目です!僕を連れて行くと言えば考えます!」
春日子は、手錠の鍵を自分の履いているズボンのポケットにさっさとしまう。
「―― −あっ!てめぇっ・・・・」
――――― ―こいつ、鍵を俺が取りにくい所に入れやがった。わざとか?
そう・・・・・春日子が鍵をしまったズボンのポケットとは男が触りにくい、お尻がある後ろポケットなのだ。
「わかった、わかったから外せ・・・」
これは仕方ないと孔蛾は折れた。
「僕も連れて行ってくれるんですねぇ?」
「・・・・はいはい、いいですよ。だから早く外して」
「外してあげます!でもしばらくは外しません、今外したら絶対に僕を置いていくので・・・」
「・・・・・」
図星。孔蛾の考えなんて春日子はとっくにお見通しなのだ。
「・・・・仕方ない、いいな"絶対俺から離れるなよ!"」
「はい大丈夫です、これじゃ"離れようもない"から」
凄い剣幕で注意する孔蛾に、春日子は淡白に返事し、腕を上げてジャラリと繋がっている手錠の鎖を孔蛾にチラリと見せる。
孔蛾はそれに「―――― ―フン!そうですね!!ハハッ」と態度変えて嘲笑ぎみに笑う。
ひと悶着あったものの、なんとか四人は出発した。
***
「孔蛾さん・・・・如何して僕たちはこんな狭くって人気のない通りを、
わざわざ遠回りして歩いているんでしょう?」
「それはね、春日子さん、不審者と誤解されたくないかないからだよ」
「如何して不審者と誤解されちゃうの?」
「それはね・・・・・目立つ通りを歩くと、毛布を抱えた宇佐美はまだ白い目で見られるだけだが、
俺達二人は、いい年した男が少女(見た目小・中学生)に手錠して連れ回しているとはたから思われちゃうの。
これって、末恐ろしい誤解だよねぇ?もしも通報されて誤解が解けぬままニュースになっちゃったら、
俺の写真がネットやワイドショーに流れ映りまくって最悪卒業文集まで読み上げられちゃう。
そうなったらもう俺の人生ゴミだよね。だから御願い、コレ(手錠)外して?」
「そうですね、大変ですよね。でも外しません!」
「オイ!!オイコラ!!」
「いやですよ、外したら置き去りにするから」
「オイ!オイ、調子乗るなよ!チビ!」
「うるさいですよ、不審者!」
「何だとコラッ!」
人気の無い通りを孔蛾たちが突き進む。
春日子と孔蛾の二人はまた言い争い、宇佐美は毛布に包んだ鏡を抱きしめ、
いまだブツブツ聞き取れない程度の小声で一人文句を言っている。夏流雫はそんな三人なんて気にせず、真剣な顔で前を歩く。
「―――― ―そうだ!占いで思い出した、今日の運勢確かめなくっちゃ・・・」
宇佐美は突然そう言いだし、ズボンのポケットから黒のケータイを取り出すと何かを必死にチェックし始める。
「オイ!何やってるんだよ?ウザミー」
孔蛾は宇佐美の気になる行動に口をはさむ。
「ウザミーじゃなくって僕は宇佐美!僕は毎日血液型占いをチェックしているんです!!
今それ思い出したんですよ!アーッ危ない!忘れるところだった」
実は宇佐美は結構な占い好き、毎日携帯で欠かさず血液型占いとか星占いとかチックしている。
「―――― ふぅん 、血液型占いねぇ」と孔蛾が呟くと、春日子が「孔蛾さん何型ですか?」と聞く。
「A型」と答えると、それを耳にした宇佐美が携帯画面を見て「――――うわぁっ!A型今日の運勢最悪ですよ!
"面倒にも災難な事に巻き込まれ、しかも会いたくない人物と出会ってしまうでしょう"だって!!」と聞きたくも無いアンラッキー情報を教える。
「げっ!何だよその結果!!」
孔蛾は「最悪だ」と顔を苦くする。
「――― ―O型は!?O型はどうなんですか?」
O型である春日子がO型の運勢をウキウキしながら宇佐美に聞く。
「――― えっと、O型は"誰かのお陰で厄介な事に見放される一日、
身近な人の言う事を素直に聞くといいでしょう" あっ、今日一番良い運勢ですよ!」
「――― ―えっ!やったー☆」
春日子はラッキーな結果に大喜び。単純である。
「――― 夏流雫さん何型ですか?」
宇佐美が夏流雫に血液型を聞く。夏流雫は「AB型です」と答えた。
「AB型は"会いたい人に会える兆し有り、強い想いを忘れないで"ですって!」
「・・・・当たると良いです、その占い」
会いたい人に会える兆し有り――― ―。その結果が夏流雫の心に希望を与える。
夏流雫は嬉しくって思わず顔に笑顔が溢れた。宇佐美はその夏流雫の姿にときめく・・・・。
「で、お前の運勢は如何なんだよ?」
低いテンションで孔蛾が宇佐美に聞いた。
「――― ―あっ、肝心な僕の血液型を見ていなかった・・・えーと、今日のB型は・・・・・えっ!・・・」
急に宇佐美が立ち止まり、フリーズする。如何した?宇佐美!
「どーなんだよ、結果は?固まってないで教えろよ!」
孔蛾がせきたてると宇佐美は覇気の無い声で「"今日のB型は大事な物が返って来ない日、もう諦めが必要です"・・・・・・」と答える。
その結果に「アハハ!ざまあ味噌汁!アハハ!自分だってろくな運勢じゃねぇーでやんのっ!あーっははっ!」と腹抱えてあざ笑う孔蛾。
「孔蛾さんに馬鹿にされた・・・・しかも下らない馬鹿のされ方・・・」と更に落ち込む宇佐美。
※ざまあ味噌汁=ざまあみろ(ざまをみろ)と味噌汁をミックスした低レベルな悪口。
だがそんな事でいちいちめげていちゃ埒があかない。
てか、そんな事よりも早く綿密な作戦会議でもしろよ!
宇佐美を指差してせせら笑う孔蛾。(ほぼフリーターに近い・・・精肉店勤務の社会人)
高飛車のくせに心弱い宇佐美。(将来の日本を担う進学校生徒)
一人勝手に喜んでいるお楽な春日子。(一応女子高校生)
まったく三人に無関心な夏流雫。
そんなこんなだが彼らは道を進む――― ―――― ―。
***
「――― ―――― ―ここです!ここに間違いありません、ここが・・・つきとめた占い師の居場所です!」
夏流雫は荒んだ雑居ビルを指差す。腕から指先はピッシリと針金の様に真っ直ぐ伸びていた。
「・・・・なんか汚いですね、ほんとにこんな所で商売やっているんですかねぇ・・・」
宇佐美は目的の地を見るなり、嫌悪をする。
排気ガスがこびり付いた様に灰色に汚れている雑居ビル・・・・・塗装もはげかけ。
「でも、ちゃんと『3F占いの館 雪の城』って看板出ていますよ。多分そこですよねぇ?」と春日子が言うと、
孔蛾は「なんか、うさんくせぇー」と呟いた。
「―――― ―さあ、行きますか」
その一言を宇佐美が切り出す。夏流雫が頷いて返事を返す。
宇佐美の真似をして孔蛾も「――さあ、行きますか」と言う。
そして、手錠がはめられている右手を春日子に差し出す。
春日子は「何ですか?その手は」と聞くと、孔蛾は「いい加減外して頂けません?
流石にビルの中まではちょっと・・・これじゃー占い師にも逆に怪しまれてしまいますしぃ・・・」とにこやかに話す。
「それもそうですね・・・でもぉっ・・・」
しかし春日子は渋る。
「御願いしますよ、春日子さーん。
ほら、身近な人の言う事を素直に聞くと良いって占いのアドバイスが言っていたじゃないですかぁ、おねがいしゃーすっ!」
かなり下手に出る孔蛾・・・・頭まで下げた。
普段ありえないその謙虚さに、春日子はなんか怪しいと違和感を覚えるも「・・・・そこまで言うのなら。分かりました、外します」と言ってしまい、ポケットから鍵を取り出す。
孔蛾はしてやったりとほくそ笑む。
次の瞬間、目にもとまらぬ早業で孔蛾はパッ!と春日子の手から鍵を奪い、
あっと言う間に自分だけ手錠を外し「――あっ、宇宙人をソリに乗せたサンタが飛んでいる」と訳の分からないことを言って空を指差す。
春日子は「―――えっ!?」と驚き、思わず孔蛾の指差した方向に首を振る。
その直後―――― ―― ―ガチャガチャカチヤッリ!!と、側にあった一時停止のポールに空いた手錠の片方の穴をはめた。
そして急いで鍵を閉める。春日子がポールに繋がれた・・・・。
「―――― ―― アァ―――ッ!!!?何するんですかァ!?」
―――― ガチャガチャガチャガチャ!!
春日子は腕を目茶目茶振って暴れるも、当たり前だがどうにもならない。
「フン!仕返しだ!お前はそこで一時停止と一緒に止まっとけ!!終わったら迎えにきてやるよ」
まんまんと孔蛾は春日子をハメた。
「―――― ―― はっ、はずしてぇっ!外してくださぁいっ・・・」
縋るような声で春日子は御願いするも、孔蛾は「駄目、引っかかる馬鹿なお前が悪い」と冷たく言い放ち、
目的の雑居ビルへとさっさと向かう。「・・・・ゴメン!助けてあげられない!」と宇佐美に手を合わせて謝られるも、
彼も目の前から消える。夏流雫には軽く頭を下げられて「お気の毒様です・・・」の一言で終わり・・・・。
そしてやっぱり彼女も行っちゃう。
結局、春日子一人がその場に取り残された・・・・・・・。
「―――――――――― ―― わぁあああ―――― ―― っん!!騙されたァ―――っ !!!」
春日子の無念の叫びが清々しい青空に響いた――――――― ――。